ダイヤモンドの君は笑う
「嘘じゃないです」
涙は溢れなければ、涙のうちには入らない。だから、嘘は言っていない。
「あ〜はいはい。じゃぁそう言うことで」
「…」
にしても、この男…いつから。
さっきのも、聞かれたのだろうか。
「あの、いつから…」
男はその問いににやりと笑うと、
「知りたい?それはねぇ〜」
「こら!若宮!!久しぶりに顔を出したと思ったら、何油売っとるんだ!早く教室に行かんか!遅刻だぞ!!!」
職員室の扉がガラリと開いたかと思うと、般若のような顔をした先生が怒鳴り散らす。
ものすごい怒号に、鼓膜がキーンと痺れる。吹奏楽部の音色も一瞬消えた。
「はいはーい」
「七原ァ!!お前もいつまでボーと突っ立っとるつもりだ!早く教室に行かんか!!」
「は…」
完全なる飛び火…。
そもそも教室の場所なんて知らないし、転校生だから、HR始まるまで入れないだろうし。
そんなの、先生だってわかってることじゃん。
でも反論したら、また面倒になるんだろうな。
「聞いてるのか.七原!」
「……」
聞いてるけど、聞いてないんですよ、先生。
こう言う時は、我慢するのが一番いいと17年生きて来て学んだことの一つだ。
だから、今回も…と思っていたのに。
私の目の前には金髪頭の大きな背中。
先生の顔は簡単に隠れてしまった。
「ちょいちょい、センセ〜。この子転校生でしょ?じゃぁまず、自分の教室知ってんの?て話しょ」