ダイヤモンドの君は笑う
Stay here by yourself.
クラスの歴史に残るような転校初日から、1週間が経った。
あの日以来、若宮との関係を疑われることも多く、女子には敵視されることもあったけれど、今ではそれも表面上は落ち着いてきた。
最初は腫れ物のように扱われていた私だけど、ゆっくりと時間をかけてクラスの空気として自然に馴染んでいっている。
漸くみんな、1人が好きな子なんだと、私を認識してくれたのだ。
たまに声をかけられることはあるけれど、業務連絡的なものばかりで、とても充実してしていた。
「やっほ〜ミカちゃん!なんで、先に学校行っちゃうかなぁ〜?おかげで遅刻しちゃったんだけど」
たった1人を除いては。
「無視〜!?俺、寂しくて泣いちゃうよ!」
馬鹿馬鹿しい。
私は若宮を視界に入れることなく、教室に入りぴしゃりと戸を閉めた。
扉の向こうで、若宮の絶叫が聞こえてくる。そしてその後には、一部始終を見ていた生徒たちの笑い声。
「まぁたやってるよ」
「イチゴ〜、そろそろ諦めろって」
「そーそー。いい加減七原サン、1人にしてあげな〜。代わりにうちらと遊ぼうよ」
金髪頭に似合わない、イチゴという男。若宮 一護(わかみや いちご)。
どうやら若宮は、クラスはもちろん学年、学校中の人気者らしく、彼の周りは常に人集りが出来ていた。
今だって。
口では寂しいと言いながら、若宮の両腕には可愛い小柄な女子がべったりとくっついている。
若宮の中の、寂しいの基準がわからない。
「佐伯くん、文化祭委員だよね。これ先生から預かってきた。」
教室の隅で予習をしていた佐伯くん。小柄な佐伯くんには不釣り合いな大きなメガネが顔を上げた拍子にズレる。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
今は6月。文化祭は9月。その前にテスト。テストは適当に、文化祭はもちろん、裏方希望だ。
「あ、あの。大変だね、毎日その…」
佐伯が若宮の方を見ながら気まずそうに言う。
「僕も、あんまり騒がしいの得意じゃないから……その、七原さんの気持ち少しわかるよ」