ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「……そうです。どうして分かったんですか?」

今までバレなかったのに……。

「あら、どうして分からないのかしら? と逆に私は聞きたいわ。新堂一族を知っていたら自ずと分かるはずなのに」

私はお祖母様似だ、バレるはずがないのだが……千里眼でもあるんだろうか? 蘭子さんって不思議な人だ。

「あの……バラしますか?」

身元がバレたのだから当然だろう。きっと追い出される。航空券を手配しなきゃ……と思っていると、「まさか!」と予想を大きく外す答えが返ってきた。

「バラすわけないじゃない。こんな面白いこと」

面白い?

「卓が何て言ったかなんて手に取るように分かるわ。でも、浮気なんて疑ってないわよ私」

蘭子さんがコロコロ笑う。
社長……掌で転がされてません?

「だって、私は新堂コンツェルンの奥方、楓とは幼馴染みで親友だもの」
「えっ、母と?」

「そうよ」と蘭子さんが今までになく優しい眼差しを私に向ける。

「だから、あの日あのホテルに行ったの。翠花ちゃんの誕生日プレゼントを持って」

探偵ごっこじゃなかったんだ。

「そこで偶然、卓を見かけて……薔薇の花を楓に渡しているじゃない。私、てっきり新堂の家と仲直りしたのかと思ったの。でも……」

「違ったんですよね?」

「そう」と蘭子さんが哀しそうに微笑む。
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