ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
いくら世のためだと言っても……私は瑞樹を犠牲にできない。
結婚するなら、瑞樹のためにも幸せな結婚をしなくていけないと思っている。

「――思うんだけど……翠花さんへの思いはさておき、拓也は奈々美さんが本当に好きよ」
「そんなことどうして分かるんですか?」

母親だといってもずっと離れていたわけだし、私たちの話も今さっき聞いたばかりだ。

「肉親だからかしら?」

蘭子さんは先程と同じように堂々と言ってのけるが……それを鵜呑みすることはできない。

「ねぇ、拓也がどうのじゃなくて貴女はどうなの? 拓也のことが好き?」

猫の眼のような蘭子さんの瞳が悪戯っぽくキラリと煌めく。
『誤魔化しはきかないわよ』と言っているのが凄く分かった。

「――好きです」

だから、仕方なく正直に答える。
蘭子さんは私の返事に満足したように、「うん」と薔薇の花が咲いたような美しい笑みを浮かべる。

「人間、正直が一番! よく分かったわ」

ニヤリと笑う蘭子さんの顔は策士な魔女といったところだろうか。恐ろしく妖艶だ。

「奈々美さん、私が信じられる?」

その顔が一瞬で仮面を被ったように真剣で真面目な顔に変わる。
何をするつもりなのだろう?

「私が何をしても、貴女の心は変わらないと断言できる?」
< 114 / 190 >

この作品をシェア

pagetop