ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

数日後。

「何だって! どういうことだよ」
「しかし、そう仰っても」

お茶の支度をして副社長室に戻ると、ドアの向こうから言い合う声が聞こえてきた。

「蘭子さんには奈々美のことも紹介済みだ!」

突然、私の名前が出る。

「なのに、どうして……」
「拓也様……」

声はそこで途切れる。

今だ! トントンとノックをして副社長室に入ると、ついさっきまで和やかだった副社長の顔が鬼の形相になっていた。

たった二十分ほど席を外しただけなのに……何があったのだろう?

そう思いながらも黙って副社長のデスクにお茶を置く。蘭子さんに貰ったダイエットティーだ。

「これは飲みたくない!」

突然、副社長が言う。
物凄く険しい顔だ。

「えっ、でも……ランチ前だからこのお茶を飲みたいと仰ったのは副社長ですよ」

突然どうしたというのだろう?

「飲みたくないと言ったら飲みたくない。下げてくれ」

何と横柄な。
チラリと剣持さんを見ると彼は何とも微妙な顔をしていた。

二人の様子が何とも気になるが、「では、コーヒーをお持ちします」と言うと、副社長は「いい」とぶっきらぼうに言い、「少し出てくる」と言って部屋を後にした。
< 118 / 190 >

この作品をシェア

pagetop