ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「――婚約者? 誰が誰の?」
「私が拓也さんの婚約者よ」
えぇぇぇ! 声なき悲鳴を上げるとそのまま唖然と彼女の顔に見入る。
深紅の薔薇だけど、チクチクと尖った棘があちこちに生えていそうな女性――姉の翠花とは真逆のタイプ……なのに婚約者?
でも……どこかで見たことがあるような……と意識が飛んでいるところに、「何をやっている!」と鋭い怒鳴り声が耳に届く。
――副社長だ。
「お前は!」
副社長は一瞬だけ驚いた表情をすると息を飲み込んだ。
どうやら、この女性のことを知っているようだ。
「お久し振りね、拓也さん」
「――お前は、楠木茉莉乃! なぜここにいる!」
恐ろしく険しい言い方だと思ったところで、楠木……あっと思い出す。
彼女、楠木建設のご令嬢じゃない!
新堂の家とは違い、楠木家は親子共々露出が大好きで、メディアにも再々出ていた。確か……長女はもう結婚していると言っていた。ということは、この女性はモデルをしているという次女?
「覚えてくれていたようね」
「何をしに来た」
副社長の摂氏零度の眼が彼女を見るが、彼女は全く動じない。
「あらっ、ご挨拶ね。お聞きになっているでしょう? 婚約のこと。だから、わざわざ私の方からご挨拶に伺ったのよ」
彼女の視線がチラリと私を見る。
「秘書の方かしら? 私にもお茶を下さらない。その香り、蘭子さんのところのハーブティーでしょう? それと同じお茶をちょうだい」
「私が拓也さんの婚約者よ」
えぇぇぇ! 声なき悲鳴を上げるとそのまま唖然と彼女の顔に見入る。
深紅の薔薇だけど、チクチクと尖った棘があちこちに生えていそうな女性――姉の翠花とは真逆のタイプ……なのに婚約者?
でも……どこかで見たことがあるような……と意識が飛んでいるところに、「何をやっている!」と鋭い怒鳴り声が耳に届く。
――副社長だ。
「お前は!」
副社長は一瞬だけ驚いた表情をすると息を飲み込んだ。
どうやら、この女性のことを知っているようだ。
「お久し振りね、拓也さん」
「――お前は、楠木茉莉乃! なぜここにいる!」
恐ろしく険しい言い方だと思ったところで、楠木……あっと思い出す。
彼女、楠木建設のご令嬢じゃない!
新堂の家とは違い、楠木家は親子共々露出が大好きで、メディアにも再々出ていた。確か……長女はもう結婚していると言っていた。ということは、この女性はモデルをしているという次女?
「覚えてくれていたようね」
「何をしに来た」
副社長の摂氏零度の眼が彼女を見るが、彼女は全く動じない。
「あらっ、ご挨拶ね。お聞きになっているでしょう? 婚約のこと。だから、わざわざ私の方からご挨拶に伺ったのよ」
彼女の視線がチラリと私を見る。
「秘書の方かしら? 私にもお茶を下さらない。その香り、蘭子さんのところのハーブティーでしょう? それと同じお茶をちょうだい」