ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
――思った通りだった。

「そう言えば、あの頃、拓也さんは新堂翠花さんにフラれたんだったわね。当時のお仲間が話してくれたわ」

茉莉乃さんの言葉に副社長が舌打ちする。

「今思うと、僕はろくでもない奴らとつるんでいたんだな。自分が情けなくなる」

自虐気味に笑みを浮かべると、「そんな奴らと今、君は付き合っているみたいだな」と嫌味っぽく言う。

「あら、どの方もアッパークラスの方ばかりよ」

フンと副社長が鼻を鳴らす。

「だから?」
「だから、上流階級の身元のきちんとした……」
「馬鹿らしい!」

副社長が吐き捨てる。

「悪いが超富裕層から言わせたら、それのどこがきちんとなんだと思うけどね」

茉莉乃さんが一瞬言葉を飲み。でも、すぐにウットリしたような微笑みを浮かべる。

「流石、拓也さんだわ。そうね、超富裕層がアッパークラスなんか相手にしないわよね。私も貴方の妻になる身、皆さんと手を切りますわ」

「さっきから言っているだろう! 君を我が一族に迎えるつもりはない」

間髪入れず副社長が言う。

「あら、でも私たちの婚約は蘭子さんがお決めになったことよ」

茉莉乃さんって全然めげない人だ。ある意味感心してしまう。
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