ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「本当に奈々美は可愛いな。やはり僕の妻になるのはお前だけだ」

キュンと胸がときめく。でも、すぐにいやいやとその思いを払い除ける。
惑わされてはいけない。茉莉乃さんも言っていたじゃないか!

「――副社……拓也さん」
「何だ?」
「もし仮にその翠花という人が生きていても、私を選びますか?」

副社長が息を飲むのが分かった。

「そっそれは……」

即答できない――これが副社長の答えだ。

「では、私は仕事に戻ります」
「ちょちょっと待て!」

副社長が私の手首を掴む。

「話はちゃんと最後まで聞け!」
「何をでしょう?」

これ以上聞いても同じことだ。

「確かに僕は翠花に失恋してからというもの荒れた」

副社長の瞳に憂いが浮かぶ。

「――でも、僕の思いはその時、ジ・エンド、終わった。だから、もし、仮に翠花が現われても、僕は奈々美を選ぶ。翠花への思いは過去のものだ」

真摯な瞳が私を見つめる。
その瞳に飲み込まれそうになりながらも、グッと踏ん張る。

「僕は翠花に僕の思いを打ち明けられないまま玉砕した。だから、後悔の気持ちが残り、かなりの間、尾を引いた」

「それほどまでに翠花さんが好きだったということですよね」

言いながら胸が痛くなる。

「――ああ、確かに大好きだった。でも、それで学んだんだ」
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