ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「一応、罪の意識はあるんだな。だったら、僕に恩返しすることも辞さないね」
「それは、恩返しをしろ、と仰っているのでしょうか?」

「その通り」と副社長が大きく頷く。

「三日間ここに通い僕の世話をするんだ」
「――あのぉ、お世話をしたら賠償金を減額して頂けるのでしょうか?」

「賠償金?」と首を捻りながらも副社長は「分かった。しよう」と答える。
だったら、迷いなどない!

「やらせて頂きます!」

敬礼しそうな勢いで返事をするとクスッと彼が笑う。
ウワッ……何だこの笑みは! 思わずその顔に見惚れる。

怒りの顔が引っ込むと、イケメンが現われたのだ。否、元々イケメンだったのだろうが、私は彼に対して恐怖しか感じなかったから今まで気付かなかったのだろう。

「時間は面会可能な時間と同じでいい」
「午前九時から午後五時までということですね?」

なら瑞樹の送り迎えも大丈夫だ。

「了解しました。ところで具体的に何をお世話したらいいのですか?」
「真面目か!」

小声だったがちゃんと聞こえた。
聞き慣れた台詞だ。

私は昔から、よく『大会社の社長令嬢らしくない』と言われていた。

建築家を目指しているときも、『コネを使いたい放題ね』と言われたが、そんな気は毛頭なかった。

私はただ、自分の作った美しい世界を見たかっただけだ。だから、頑張っただけなのに……。

頑張れば頑張るほど周りは変な子を見るような目で私を見た。まるで頑張ることが悪いことのように……。
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