ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
***

「瑞樹ぃ! 癒やしてぇ」

保育園にお迎えに行くと、瑞樹がいつものように両手を私の方に差し出して抱っこをねだる。

その体をギュッと抱き締めて瑞樹の香りを思いっきり嗅ぐ。
ハァァァ、癒やされる。

「瑞樹君、今日もとてもイイ子でしたよ」

年配の保育士さんがニコニコと笑いながら瑞樹の頭を撫でる。
当然だ! 瑞樹が悪い子であるはずがない。

誰かに聞かれたら『叔母バカ』と言われるだろうが、誰にも聞かれないので心の中で大いに褒め称える。

「今日もお世話になりました。ありがとうございました」

礼を述べると「ありがと、バイバイ」と瑞樹も真似をする。
男の子は比較的言葉が遅いと言われるが、瑞樹はもう二語続けて言える。天才だ!

「今日は何が食べたい?」

手を繋ぎ保育園を出ると、アパートまでにあるスーパーに立ち寄る。

「カレー、食べる」

ついこの前までは一方的に話し掛けるばかりだったが、二歳の誕生日を迎えた頃から、こんなふうにまともな会話ができるようになった。

意思の疎通ができるって素晴らしい!
『ああ、瑞樹は本当に人間だった』と感動を覚えたのを今もしっかり覚えている。でも……。

「昨日もカレーって言ってなかった?」
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