ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「お前、本当に過保護に育てられたんだな。その一言で慎司と親父さんの態度が一変したんだ。『誰が奈々美を脅迫しているんだ!』ってね」

恥ずかしさからカッと頬が上気する。

「お袋さんは元々蘭子さんとつるんでいたみたいだな。親父さんに『丸東建設との業務提携、及び、俺とお前の結婚を許さなかったら離婚する』と宣言したんだ」

父も兄も基本、母には弱い。

母は……姉と小金啓治との結婚には大反対だった。だから、啓治の子どもでもある瑞樹が姉の命を奪ったと思ってしまった。あの時、兄の言いなりになったのは、だからだ。

それを悔やんでいたのだろう。
しみじみとしていると、パタンとドアが開き、テケテケと瑞樹が入ってきた。

「瑞樹ぃぃぃ!」

副社長が途端に相互を崩す。
だが、瑞樹は副社長を無視して私に向かって両手を突き出した。

「どっどうしてだ?」
「忘れられちゃったんじゃないですか?」

瑞樹を抱き上げると動揺する副社長に意地悪を言う。これぐらい許されるだろう。

「みっ瑞樹、たぁ君を許して。何でもするから」
「いや!」

へっ? 鳩が豆鉄砲を食ったような副社長に吹き出す。

「笑いごとじゃないぞ! 早くも反抗期か?」

ある意味そうとも言えるが、もう少し困らせておこうと本当のことは言わない。
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