ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「瑞樹、機嫌を直して」
「いや!」
「瑞樹、今日からずっと一緒だぞ」
「いや!」
「瑞樹ぃぃぃ!」
「いやぁぁぁ!」

二人の漫才ような掛け合いを眺めながらやっと平和が訪れたな、とさっき貰ったバラの花束を見る。

「副社長、凄いバラですね。百本ほどありそう」
「百八本だ」
「煩悩祓いにですか?」
「馬鹿か! それは除夜の鐘だ」
「だったら、なぜ中途半端な」
「それぐらい自分で調べろ! 今、忙しいんだ」

再び瑞樹のご機嫌取りに戻る副社長を横目に携帯を操作し始めると、そこにあったのは――。

【バラの花言葉:108本は?】
「結婚して下さい」プロポーズの時、一緒に渡すと効果的でしょう! ぜひお試し下さい。

――だった。まんまじゃない。そう思った途端、うっ、と喉が詰まり目頭が熱くなる。

「みー」瑞樹が私の頬を撫でる。

「瑞樹、大丈夫だよ。嬉しいんだよ。嬉しくても涙って出るんだよ」
「奈々美」

副社長が瑞樹ごと私を抱き締める。

「これからはずっと一緒だ。愛してるよ。奈々美、瑞樹」

副社長が私の頬にキスをすると、真似して瑞樹ももう片方の頬にキスをする。

「恩返しのお返しに、こんな素敵な幸せが貰えるなんて……二人とも愛してる」

私もお返しに二人の頬にキスをした。



~THE END~
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