ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「そっそんなことあるわけないじゃない! 処女なのに!」

ハッと口元を押さえるが、時既に遅し。

「へぇ、処女ねぇ。じゃあ、マリア様だったのか?」

明らかに目が笑っている。
もうこの人ヤダ! 溜息交じりに説明をする。

「甥です。亡くなった姉の子です」
「その子の面倒を見ているのか? まさか一人で?」
「そうですがそれが何か?」

副社長はちょっと言葉を切り、「お前幾つだ」とまた訊く。

「二十二歳です」
「昨日の貧血は過労と風邪だと医者が言っていた」
「はぁ、そうでしたね」

でも、もうすっかり回復したので他人事だ。
やはり病院の薬はよく効く。さらに点滴まで受けたのだ。百万馬力だ。

「弁当はそっちで食べる」

ソファーセットの方に置けというように指を差す。

「大丈夫ですか?」

ベッドの上で食べたらいいのに、と思いながらローテーブルに置く。

「召し上がるのなら、お茶の支度をしますね」
「その前に……」

クイッと顎を下げ『こっちに来い』と指示をする。

「何でしょう?」とベッドに近付くと、いきなり手首を掴まれベッドに引きずり倒される。

「ちょちょっと、何をするんですか!」
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