ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「医食同源をモットーにしている『敏活』の料理だ」

聞いたことがある。ここ二年ほどで急成長した食事処だ。
確か、『中国の薬食同源思想に基づき、医者要らずの健康的な生活を目指すために、美味しい食事を取ろうをコンセプトにした店』とテレビのリポーターが言っていた。

「美味しい料理は、目にも旨い。美しいだろ?」

仰せの通りだ。色彩豊かな料理たちだが人工的な毒々しさはない。自然な色合いに『フレッシュ』という単語が浮かぶ。

「本来なら出前をしない店だが、無理を言って持ってきてもらった」
「でしたら、今朝もご自分でこれを頼まれたらよろしかったのでは?」

何も私の貧民弁当を食べる必要などなかったのではないだろうか?

「だから、それをお前に頼もうとしたらお前が弁当を出したんだろ?」

えっ! そうだったの?

「だが、敏活にも劣らぬ旨さだった」
「もしかしたら、それって嫌味ですか?」

「お前なぁ」と副社長は呆れたように溜息を吐く。

「ツンデレは可愛いが、ツンツンは可愛くないぞ。その尖った性格、改めた方がいい」

どの口が言う! 人のことが言えるのか?

「とにかく、食べろ!」
「こんなに食べられません」
「馬鹿か、僕も一緒に食べるに決まっているだろ」

確かに一人分には多すぎる。
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