ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
副社長が私を誘い進んだ先はエレベーターホールだった。四基並んでいる。
その一番奥の扉前に立つ。

そして、『開』のボタンを押すとすぐにドアが開いた。
副社長は中に入ると一番上にある52Fのボタンを押す。

「最上階は社長をはじめとする重役たちの部屋が並んでいる」

私を怖がらせようとしているのか?

「我が社は他社から顔面偏差値が高いと評判だ」

美男美女が揃っていると言いたいのだろうか?

「特に52Fの重鎮たちは、年齢に幅はあるものの揃いも揃ってイケメンばかり……」

ほほう、思ってもいないところで眼福に預かるわけだな。

「お前、そのニヤけた顔は何だ!」

副社長が肩に回した腕をグッと締める。

「ちょっちょっと苦しいじゃないですか!」

コホコホ咳をすると、「お前が悪い!」と意味なく悪者にされる。

「だからだな……」と言いながらまじまじと私を見る。そして、「ふむ」と大きく頷いた。

何を一人で納得しているのだろう、と思っていると副社長が思わぬ言葉を発する。

「ダサい眼鏡も簾のような前髪もそのままでいい。その方が、奴の関心を引かないからな」

奴って誰それ? 本当、訳の分からない人だ。
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