ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「社長、あげませんからね」

社長! このイケオジが?
そう言えば……どことなく似ているような……。

「独り占めとは水くさい」

いったい何の話をしているのだろう?

「はーっ」とあちこちから溜息が聞こえ始め、一人また一人ドアの中に消えていく。チラッと見えたがその顔はどれもこれも呆れ顔だった。

「君、名前は?」
「言わなくていいぞ」

イヤイヤ、社長さんを無視するなんて出来ない。

「山本奈々美です」
「そうか、私は拓也の父だ。それにしても実に可愛い」

この親子……審美眼というものが欠落しているのではないだろうか?

「拓也、なら、時々、ちょっとだけ貸してくれ」
「絶対厭だ!」

呆れて物が言えないとはこのことだ。他の重役たちもそれを知っているから、二人を放って仕事に戻ったのだろう。

だが、ここにまだ不服そうな人たちが……。
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