ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「婚約者兼秘書の私たちを差し置いて、お世話係? 認めません!」

病室にいた美人秘書だ。
彼女を中央に置き、左右に二人ずつ……これまた美女が佇んでいた。

「葵様の仰る通りだわ」

四人が声を揃える。
どうやら中央の彼女は葵という名前のようだ。

「言葉を返すようだが、君たちは婚約者(仮)だよ。それに、副社長の正式な秘書は剣持君だけだ。君たちは秘書補佐。言葉は正確に!」

そう宣いパチンと魅惑的なウインクをしたのは副社長ではない。社長だ。

「正しい言葉遣いも出来ない奴らを集めたのは社長、貴方ですよ!」

副社長がギロリと睨む。

「元はと言えば君のせいだよ。可愛い物好きが高じてイケない道に走りそうだったから、それを止めようとしたんだよ」

社長は自分は悪くないと胸を張る。

「貴方に言われたくありません!」

社長と副社長の言い合いに、どっちもどっちだだな……と思っていると、「何をしているのですか!」とピキンと背筋が伸びるような冷たい声が聞こえた。

剣持さんだ。

「なるほど」

流石といおうか、彼は一瞬にしてこの状況がどういうことなのか分かったようだ。

「君たち、さっさと業務に戻りなさい」

五人の秘書補佐に命令する。
彼女たちも剣持さんには何も言えないようだ。スゴスゴとその場を後にする。
< 43 / 190 >

この作品をシェア

pagetop