ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「何が可笑しいんですか!」

理不尽な大笑いに怒りのボルテージ上がる。

「だって……謝れって……お前、自分を苛めていた奴を何で庇うんだ?」

笑い過ぎて涙まで浮かべている。それを指先で拭いながら副社長が訊ねる。
そういえばドアドンされていたんだった。

「貴女、馬鹿じゃないの!」

はい? 肩越しに振り向くと美和さんが何とも言えない複雑な顔で口を尖らせていた。

「貴女なんかに庇われても少しも嬉しくないわ!」

辛辣な物言いだが耳が赤く染まっている。
照れているのだろうか?

「君も分かっただろう? 僕の『可愛い』の基準は見た目の可愛さが一番だが、『可愛い』は内なるものから滲み出るものだとも思っている。僕の家政婦を希望するのなら、奈々美のように内なる可愛さを磨くんだな」

「すっ素敵!」

美和さんの顔がパッとバラ色に輝く。今泣いたカラスがもう笑った……かのように。

「お初です! 私を見てお声がけ下さったの。はい! 頑張ります。きっと副社長の家政婦になります!」

――何というバイタリティー。転んでもタダでは起きないど根性。開いた口が塞がらない。

副社長に意気揚々と宣言すると美和さんはツンと顎を上げ私にも宣言した。

「貴女になんか負けないんだから!」

いやいや、私としては早々に取って代わって欲しい。
スキップするように去って行く彼女の背中を見つめていると剣持さんがポツリと呟いた。

「彼女、男前ですね」

確かに……。
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