ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「えっ! 今の奴、男だったのか?」
何を言うんだ! トンチンカンなことを言い出す副社長に間髪入れず、「違います。正真正銘の女性です!」と彼女の名誉のためにしっかりと訂正する。
そんな私の頭を「本当にお前は可愛いな」と副社長はヘルメットの上からポンポンする。副社長の『可愛い』にはかなり慣れたが――彼の言葉が蘇る。
『可愛いは内なるものから滲み出るものだとも思っている』
彼は上辺だけを見ているんじゃなかったんだ。そう思ったらちょっとだけだが彼を見直した。
「ほら、肩を貸せ」
「あっ、ちょっと待っててて下さい。手を洗ってきます」
トイレを出たところで美和さんに襲われて、まだ洗っていなかったのを思い出す。
「お前、バッチィ奴だな」
心底厭そうな顔で仰け反ったので、思わずもう片方の足を踏みつけた。
パンプスでなくて良かったと思え!
「お前、僕の足を両方ダメにするつもりか!」
背中で副社長が怒鳴っているが……フン、放置だ!
***
「瑞樹、聞いてくれ。奈々美は酷い奴だ」
『病み上がりゆえということで、山本さんとお帰りになってもいいようにスケジュールを組んでおきました。お送り致します』
午後五時。帰宅の準備をしていると、剣持さんが副社長にそう言っているのが聞こえた。でも……その言い方はまるで大根役者が台本を読んでいるような棒読みだった。
何を言うんだ! トンチンカンなことを言い出す副社長に間髪入れず、「違います。正真正銘の女性です!」と彼女の名誉のためにしっかりと訂正する。
そんな私の頭を「本当にお前は可愛いな」と副社長はヘルメットの上からポンポンする。副社長の『可愛い』にはかなり慣れたが――彼の言葉が蘇る。
『可愛いは内なるものから滲み出るものだとも思っている』
彼は上辺だけを見ているんじゃなかったんだ。そう思ったらちょっとだけだが彼を見直した。
「ほら、肩を貸せ」
「あっ、ちょっと待っててて下さい。手を洗ってきます」
トイレを出たところで美和さんに襲われて、まだ洗っていなかったのを思い出す。
「お前、バッチィ奴だな」
心底厭そうな顔で仰け反ったので、思わずもう片方の足を踏みつけた。
パンプスでなくて良かったと思え!
「お前、僕の足を両方ダメにするつもりか!」
背中で副社長が怒鳴っているが……フン、放置だ!
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「瑞樹、聞いてくれ。奈々美は酷い奴だ」
『病み上がりゆえということで、山本さんとお帰りになってもいいようにスケジュールを組んでおきました。お送り致します』
午後五時。帰宅の準備をしていると、剣持さんが副社長にそう言っているのが聞こえた。でも……その言い方はまるで大根役者が台本を読んでいるような棒読みだった。