ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
今夜のメニューはお子様ランチ擬き。要は冷蔵庫や冷凍庫の余り物をワンプレートに盛り付けるだけの手抜きメニュー。別名、冷蔵庫掃除盛り。

梅雨時期から夏場は一週間に一回、このメニューで庫内を片付けるのが私の習慣だ。自分では食中毒対策だと思っているが、本当に対策になっているかは分からない。

こんな雑なメニューなのに、瑞樹はこのお子様ランチ擬きがカレーの次にお気に入りだ。そして……この人もそうみたいだ。

「すげぇ!」とテーブルの夕食を見た途端、副社長の瞳がキラキラ輝き出した。

「お子様ランチなんて食べたの何十年ぶりだろう?」

歓喜の声を上げた途端、「あれ?」と訝しげに瑞樹のプレートと見比べる。

「おい、どうして僕のチキンライスには旗が立っていないんだ!」

そして、瑞樹のプレートを指差しながら文句を言い始める。本気で怒っているようだ。

「大人だから?」
「お前、可愛い子ぶりっ子して誤魔化そうとするな」

いやいや、そんな気は毛頭ない。ただ、瑞樹の分はともかく、副社長の旗まで作るのが面倒だっただけだ。

「えっとですね、瑞樹のはお子様ランチ擬きで、副社……拓也さんのは大人ランチ擬きだから?」

苦しい言い訳だ。でも、旗一つでいい年をした大人に真顔で叱られるとは思ってもいなかった。
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