ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「お前は知らないのか?」

しかし、副社長にも言い分があるようだ。

「お子様ランチは大人にとっても永遠のロマンだということを!」

でも、やっぱり副社長は副社長だった。
何だ? その永遠のロマンって?

私が疑問符を顔に貼り付けポケッと副社長を見ていたからだろうか? 副社長は呆れ果てたように深い溜息を吐く。

「ピーター・パンだ!」

そして、さらに意味不明の言葉を告げ、夢見るように天井を見つめた。

副社長が言っているのは『永遠の少年』と呼ばれる『エバーランド』に住むという、あの『ピーター・パン』のことだろうか?

「お子様ランチはピーター・パンのような存在だと言っているのだ」

どうやらそうみたいだ。副社長曰く。お子様ランチを見ると童心に返り、あの頃のようにドキドキ、ワクワクが蘇るのだそうだ。それが仕事にインスピレーションを与え、より良いアイディアが浮かぶと言う。

「その効果は副社……拓也さんだけではないでしょうか?」

私は別段そんなふうに思ったことなどない。

チッチッチッと舌を打ち指を左右に振りながら、副社長は「分かっちゃいないね」と溜息を吐く。

「童心の向こうにある可愛いが世界を救うんだ!」

副社長は力説するが……すればするほど意味不明になっていく。

「だからだな、早く旗を立てろ!」

要するに、旗を立てて欲しいということのようだ。

これ以上ごちゃごちゃ言われるのも面倒なので、ちゃっちゃと旗を作りケチャップライスの真ん中に突っ立てた。こんなことなら手を抜かず、最初から二人分作ればよかったと反省しながら……。

副社長は旗を目にすると、ようやく満足したのか嬉々と食べ始めた。
本当、瑞樹より手のかかる人だ。
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