ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「これで喜怒哀楽の『怒』は意識しただろ?」

シレッとした顔の副社長がメチャクチャ腹立たしい。ボコボコに殴りたいところだが瑞樹がいるので我慢する。

「意識しすぎてぶっ飛ばしそうです」

それでも嫌味ぐらいは言ってやりたい。しかし、それも彼には通じなかったようだ。

「それは展開が早すぎるぞ」

トンチンカンなことを言い、クッと笑うと「お前は本当に瑞樹ソックリだな」と瑞樹のプックラとした頬をツンツンする。止めなさい、瑞樹が起きる!

「普通、大人になると喜怒哀楽が乏しくなるがお前はいつも丸出しだ」

えっ! 思わぬ言葉に目が点になる。
一歩外に出れば敵ばかりと瑞樹以外に素顔を隠してきたのに……丸出し?

「知らなかったとみえるな」

副社長の肩が微妙に下がる。

「いいのか悪いのか、家族みたいに思われていたのかな? やっぱり男としては意識されていなかったということだろう」

苦笑しながらも「でも、もう意識しただろ? キスしたんだからな」と宣う。

「あっあんなの、瑞樹といつもしているもん」

声が上ずる。

「お前、本当に可愛いな。もんって何だ。完全に動揺しているな。やっぱりファーストキスもまだったか」

『も』って、以前、処女と言ったのをまだ覚えていたのか。クーッ!
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