ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
誤解が誤解を呼ぶ
どうやら私は副社長を舐めていたようだ。
副社長の本気とやらは……容赦なしだった。

「奈々美、肩を貸せ」と杖代わりは勿論のこと、「こっちの足が疲れた」とギブスじゃない足のマッサージを要求するし、「ジムに通えないからストレスが溜まる」と言いながら膝枕をさせるし……。

とにかくもういろいろありすぎてキリがない。
しかし、膝枕でストレスが解消されるのだろうか?

日がな一日「奈々美」を連呼する副社長には本当にもうウンザリだ。私の方がストレスで禿げそうだ。

「奈々美、どうだ、嫁になる覚悟は出来たか?」

ニヤニヤと悪い笑みを浮かべる副社長に、「逆効果では?」と剣持さん。
よく分かっていらっしゃる! なのに……。

「お前は分かっていないな。スキンシップが多い男女は意識し合うものだ」

肩に足に膝に触れ……確かにスキンシップは多い。しかし、意味が違うと思うのは私だけではないようだ。

剣持さんが深い溜息を吐く。

「僭越ながら私めの見解を申し述べますと、副社長の山本さんへの扱いは下僕と同様と捉えられても致し方ないと思われます」

おお、そうだ! その『下僕』だとドンピシャな言葉に大きく頷く。

「だが、こいつにはキスもしたぞ。僕は下僕にキスはしない」
「おや?」

剣持さんがスポットライトを浴びたように顔を輝かせる。
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