ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「心に負った傷は一生残るんだ」
「まさか、副社長は足の怪我と同時に心にも傷を負ったと?」
「その通り。お前一人受け止められなかった自分の不甲斐なさに心が痛む」

ヨヨと芝居じみた泣きを披露して、「だから、一生僕の傷は治らない」と宣う。

何という無茶苦茶な道理だ! 開いた口が塞がらない。

「分かったな。ということで、お前は今日から秘書としての仕事を剣持に教えて貰え。秘書見習いにしてやる」

はい? どういう展開なのだろう?

「僕はパートナーと公私共に支え合いたい。だから、子供ができるまでは家庭だけに収まらず、僕の仕事にも協力して欲しいと思っている」

「――と副社長は仰っていますが、単に二十四時間一緒にいたいということなのです」

黙って聞いていた剣持さんがフンと鼻で笑う。

「いいだろう。ようやくそういう相手に巡り会えたんだから」

副社長がふて腐れながら言う。
――きっと副社長がそう思うのは姉に似ているからだろう。

ジクジクと痛む胸を隠しながら、ニッコリ微笑む。

「副社長、剣持さんの補佐が見つかるまで今のご命令遂行致します」

「だから、意味が違うだろう」と副社長がブチブチ文句を言っているが、これ以上聞く耳は持たないというように、剣持さんに話し掛ける。

「で、まず何を致しましょう」
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