ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「そんなところに連れて行ったら、急激な気温の変化に瑞樹の身体がビックリしちゃいます」

今の時期、アイスランドなら十度そこそこじゃないだろうか?

「先日も申したと思いますが、それでなくてもこの時期の子は、親から貰った免疫が切れて病気になりやすいんですよ」

この言い分には流石の副社長も言葉を詰まらせる。

「確かにそうかもしれないが……」

それでも諦めきれないのか、ブチブチと文句を言いながら何か考えているようだ。

「なら、北海道はどうだ? この時期、オーロラは見られないだろうが……」

どうも副社長の拘りはオーロラにあるようだ。きっと瑞樹に見せたいのだろう。
その気持ちは有り難く頂いておくが……旅行ねぇ。

姉の件もあり、あまり副社長とは時間を共にしたくない……とは思っているが、同居しているのだ、二十四時間一緒にいると言って過言ではない。

なのに、わざわざ旅行って……。

「そう言えば、この時期なら……トウモロコシが旨いだろうなぁ」

副社長の言葉にピピンとフラグが立つ。
瑞樹はコーンスープが大好きだ。

美味しいトウモロコシがあるなら、美味しいコーンスープもあるはずだ。
飲ませてあげたい!
――と思いつつ、私も相当な叔母バカだと苦笑する。

「分かりました。ありがとうございます。よろしくお願いします」

素直に頭を下げると副社長がニッコリ笑う。

「北海道の夏をたくさん食べて帰ろう!」
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