ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
***

急遽決まった旅行に、多忙な副社長が本当に行けるのか疑問だった。

だって、スケジュールを管理しているのは剣持さんだよ。きっと彼が反対するに決まっている。それを期待したのに……意外や意外、剣持さんはすんなり同意した。

「北海道行きは当初からの予定でしたから。少しスケジュールを組み直しましたが許容範囲でした」

元々北海道出張が決まっていた?
何てことだ。

「アイスランドなら即ノーとお返事していましたがね」

まさか、アイスランドはフェイク?
私が旅行を渋ると思って?

わざとハチャメチャな提案をして……納得させるように仕向けた? それが事実なら、本当に策士だ。

「まぁ、カナダなら……」

カナダでもオーロラが見られるそうだ。だが、カナダへの出張が決まっているのは社長だそうだ。

「まぁ、少々調整は必要ですが、OKの返事が出せたのですが……」

いやいや出さなくていいから、と心の中で突っ込んだのは言うまでもない。

「お仕事なら、私と瑞樹はご遠慮します」
「ダメです!」

剣持さんが速攻で却下する。

「お二人がいらっしゃらなかったら副社長もキャンセルされます」
「そんないい加減なぁ」
「仕事には変わりありませんが、出張といってもプライベート色が強いので」

どういうこと?
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