ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
剣持さん曰く、「北海道への出張は、リニューアルオープンした海音リゾートホテルの視察兼オープニングパーティへの参加が主な目的です」だそうだ。
海音リゾートホテルといえば、海外でも名の通ったラグジュアリーなリゾートホテルだ。
「あちらのホテルは国内外合わせて二十八あり、その全施設に我が社は携わって参りました。ですからパーティーへの参加は絶対でして……」
「じゃあ、副社長の代わりに社長では?」
彼の足のことを考えるとキャンセル、もしくは社長が代行するのが筋ではと思ったのだが、「社長は大っぴらに参ることができないのです」と剣持さんが眉間に皺を寄せる。
なら、コソコソ隠れてならいいのだろうか?
そんな疑問が湧き、思わず「どうしてですか?」と理由を訊ねると、剣持さんが苦笑いを浮かべ言い難そうに言う。
「実は、海音リゾートホテルの社長というのが、副社長のお母様、社長の別居中の奥様でして……」
何と! 驚愕の事実。
「業界では有名な話なのですが、ご存じではなかったようですね?」
私が現場で作業員として働いていたから剣持さんはそう言ったのだろうが、心に疚しさのある私は、私の素性を知っているのかと思わずドキリとした。
「はぁ、全然知りませんでした。あの……社長が行けない理由を聞いていいですか?」
「はい。それは奥様が社長を怒っていらっしゃるからです」
「えっ? まさか浮気とかですか」
海音リゾートホテルといえば、海外でも名の通ったラグジュアリーなリゾートホテルだ。
「あちらのホテルは国内外合わせて二十八あり、その全施設に我が社は携わって参りました。ですからパーティーへの参加は絶対でして……」
「じゃあ、副社長の代わりに社長では?」
彼の足のことを考えるとキャンセル、もしくは社長が代行するのが筋ではと思ったのだが、「社長は大っぴらに参ることができないのです」と剣持さんが眉間に皺を寄せる。
なら、コソコソ隠れてならいいのだろうか?
そんな疑問が湧き、思わず「どうしてですか?」と理由を訊ねると、剣持さんが苦笑いを浮かべ言い難そうに言う。
「実は、海音リゾートホテルの社長というのが、副社長のお母様、社長の別居中の奥様でして……」
何と! 驚愕の事実。
「業界では有名な話なのですが、ご存じではなかったようですね?」
私が現場で作業員として働いていたから剣持さんはそう言ったのだろうが、心に疚しさのある私は、私の素性を知っているのかと思わずドキリとした。
「はぁ、全然知りませんでした。あの……社長が行けない理由を聞いていいですか?」
「はい。それは奥様が社長を怒っていらっしゃるからです」
「えっ? まさか浮気とかですか」