君の隣でその白いドレスを着たくて






陽華はまだ、か細い声で、途切れ途切れでしか話せないようだった。

僕のことがわからなくても、今までの意識がない状態と比べればなんてことはない。

僕のことはこれから少しずつ知っていってもらえれば、それで構わない。



「新海陽華さん。
僕は五十嵐幸樹。
嫌じゃなければ、これから度々会いに来てもいいかな?」



陽華に優しく声をかけると、笑顔で小さく頷いたのがわかった。


陽華の両親は担当医に話があるからと言われ、病室を出ていった。

僕の両親も、仕事を抜けてきたからと、部屋を出ていく。


病室にはふたり取り残された。


陽華にはたくさん話したいことがあるはずなのに、いざとなると何も出てこなくて、ただただ陽華と見つめ合っていた。





< 130 / 172 >

この作品をシェア

pagetop