君の隣でその白いドレスを着たくて




永渡先輩は大人だ。

あたしはそんな考え方全然できない。


五十嵐先輩のことを好きな気持ちとか、祝福したい気持ちとか、自分に対する情けない気持ちとか、もういろいろなものが心の中をぐちゃぐちゃにしていく。



「どうぞ使って。」



気づいたら涙が止まらなくなっていて、永渡先輩がハンカチを差し出してくれる。



「……ありがとうございます。
ごめんなさい、永渡先輩の方が泣きたいですよね。」



「俺はふたりが付き合い始めた頃に十分なくらい泣いたから大丈夫だよ。」



あたしは先輩のハンカチを借りて、なかなか止まらない涙を繰り返し拭う。


永渡先輩は何も言わずに、あたしの背中を優しく摩ってくれた。



「もう大丈夫です。」



「ん。じゃあ一緒に行く?
さすがにひと言くらい言ってきた方がいいよね。」



先輩は五十嵐先輩と新海さんの方を見たあとに、あたしの顔を伺う。



「行きます。」



「高木さんがそう言ってくれてよかった。
俺ひとりじゃしんどいなと思って、困ってたんだよね。」



「そうですよね……。」



「え、また泣く?」



「泣きません。大丈夫です。」



「ふふっ、そっか。じゃあ行こう。」



永渡先輩の後に続いて、新郎新婦の席へと向かう。



「コウ。久しぶり。」



「久しぶり、永渡。
忙しいのに来てくれてありがとう。
高木さんも、ありがとう。」



「来るに決まってるだろ。幼なじみたちの結婚式なんだから。
おめでとうコウ、陽華。」



「おめでとうございます。」



「「ありがとう。」」



「そのうちするとは思ってたけど、卒業してすぐ結婚なんて、随分早いよなぁ。」



「僕には陽華以外はありえないからね。
どうせするなら早くてもいいかな、と。」



「私は23だから、そんなに早くもないしね。」



「幸せそうな様子がみられて嬉しいよ。
結婚してもたまには俺も誘ってもらって、一緒に飯とか行きたいな〜。」



「それはもちろん。また誘うよ。」



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