俺様外科医の極甘プロポーズ
「徐々に覚えていけばいいじゃない」
「私だって、少しずつ頑張ろうと思って必死で頑張っているのに、壱也先生は私のことをいつも睨むんですよ」
「本当にそれ、睨んでいるのかな?」
「そうですよ! すごいおっかない顔してずっと私のことをみるんですから!」
……気づいてたんだ。実は最近、点滴のボトルと注射伝票を見比べながら考え込む田口さんを凝視している壱也先生という構図をよく見かけていた。薬剤は違えたら命にかかわるものだから、先生が心配するのはわかる。私だって心配だ。でも、あれは先生が悪い。あんな顔で見ていたら、睨んでいると思われても仕方がない。あの人の顔は整いすぎているが故、真顔になると怖いのだ。
「でもほら、かっこよければなんでも許せるんでしょ?」
顔がよければすべてよしって、確かそう言っていたじゃない?田口さんのことを和ませるつもりだったのに、彼女は眉間にしわを寄せて語気を強めた。
「なに言ってるんですか先輩! いくら顔がよくてもあんな性格ブスの男なんてダメですよ」
思いのほかまっとうな答えが返ってきた。どうやらようやく目が覚めたらしい。
「そうだね。その通りだね」
「そうですよ、先輩!」
「……とにかく、仕事は一緒に頑張ろう! 私も新人のころは何もわからなくて怖かったよ。たくさん悩んだし、ミスもした。でもどうにかできるようになったから」