俺様外科医の極甘プロポーズ
私は予約より二十分ほど前に店に向かった。
「予約した花村です。少し早いけど、入れますか?」
「もちろんです。コートをお預かりいたします」
お店の人は快く迎え入れてくれた。私は荷物をクロークに預けて席に着く。
「お飲み物はいかがいたしますか?」
「ええと。……連れが来てから注文します」
「かしこまりました」
渡されたドリンクメニューを見ながら先生を待つ。他のテーブルではカップルたちが楽しそうに会話をしながら食事を楽しんでいる。
「先生、早く来ないかな」
私は待った。けれど、先生は一向に現れない。
約束の時間から十分が経過し一度メッセージを送ってみた。でも返事がない。それから電話をした。それにも出ない。
「どうしたんだろう」
私は携帯電話を握り締めたまま入口の方を見つめる。
「お客様。お料理をお出ししてもよろしいでしょうか?」
「……あ、はい。お願いします」
席を立つわけにもいかず、次々に並べられていくおいしそうな料理をただ見つめていた。先生が現れると信じて。
でも、デザートのアイスが溶けてしまっても、壱也先生は来てくれなかった。