俺様外科医の極甘プロポーズ
「先輩、顔すごいですよ?」
ロッカーでたまたま一緒になった田口さんは私の顔を覗き込むとそういった。
「うん。わかってる。昨日寝てなくてさ」
あくびを噛み殺しながら答えると、田口さんはにやりと笑う。
「もしかして、彼が寝かせてくれなかったとか?」
「そうじゃないよ。海外ドラマ見てたらつい、徹夜しちゃったの」
「へえ、そんなにハマるなら私も見てみたいです!」
目を輝かせる田口さんに「お勧めはしないよ」とだけ言って、私は病棟へと向かう。
途中の廊下で私はひとりの女性に声をかけられた。
「あのすみません。医局ってどこですか?」
「医局、ですか?」
いくら尋ねられても関係者以外に教えるわけにはいかない。
私はその人の顔を見た。そして息をのむ。
間違いない。あの人だ。
黒髪のロングヘアにバービー人形のような目鼻立ち。そして百七十センチはありそうなモデル体型。遠目でもそうとうな美人だと思ったけれど、間近でみるとその美しさに圧倒されてしまう。
「昨日の……」
思わず言葉が出てしまい、私はとっさに口をつぐむ。
「昨日?」
その女性は不思議そうに首をかしげる。
「いえ。なんでもありません。申し訳ありませんが、関係者以外は立ち入れない場所なんですよ」
「大丈夫。関係者みたいなものだから」
「といいますと?」
「柏瀬壱也、わかりますよね?」
この人は何が言いたいんだろう。私は冷静に言葉を返す。
「ええ、もちろん。当院の外科部長ですから。でも先生は今日、学会で不在です」
「知ってるわよ。私は彼の婚約者なの」
「婚約者!?」