俺様外科医の極甘プロポーズ
6.5俺の後悔
俺は自宅マンションにタクシーで乗り付けると、クローゼットを開け、ダークグレーのスーツを手に取った。
きちんとアイロンがかけられたワイシャツと、ネクタイ。目のつくところにハンカチとポケットティッシュも置いてある。
もちろんこれは花村が準備してくれたものだ。急に予定をキャンセルした俺に腹を立てているに違いないのに、こんな気遣いができる彼女を本当に尊敬するし感謝する。
この埋め合わせは絶対にしなければと心に誓いながら、俺は急いで着替えを済ませると待たせておいたタクシーに飛び乗った。
昨日の夕方、俺は救急搬送されてきた患者を受け入れた。バイクと自転車の接触事故で、患者は自転車を運転していた十六歳の女子高校生。擦り傷程度の受傷だとの報告が救急隊からあったこともあり、そう時間もかからないだろうと安易に考えていた。
しかし、病院到着後に患者の状態は急変した。
「先生、血圧七十台です」
見ると顔面蒼白で意識もほぼない。名前を呼んでももちろん答えるそぶりは見せなかった。
「ルートキープして生食全開。いけたらCTとるけど、とりあえずエコーで見てみるか」
看護師に血管確保を任せて、俺は腹部にエコーのプローベを当てる。
「……なるほどね。さっきの採血に血型とクロスマッチ追加して輸血の準備しておいて」
「はい」
おそらくどこかの臓器が損傷して、出血しているのだろう。
あいにくうちの病院で対処できる状態ではない。
CTを撮った後、急いで受け入れてくれる病院を探すか。
俺は救命処置と並行して方々の病院に電話をかけた。しかしなかなか見つからない。そこへ能天気に副院長が姿を現した。