俺様外科医の極甘プロポーズ
「森先生。今日はありがとうございました」
高級料亭に座敷で俺は森先生に頭を下げた。
「そんなに恐縮しなくてもいいよ。お互い様だろ」
森先生は屈託のない笑顔を俺に向けた。おそらく本心からそう言ってくれているのだろう。
「本当に助かりました。受け入れてもらえなかったら、あの子と命を救うことができなかったと思います。自分はもっと精進しないといけませんね」
「柏瀬先生こそやり手だろ」
「そんなことありませんよ」
「ご謙遜を! 聞いたよ。実家の病院立て直し成功したんだってね。噂では次期院長って話じゃないか」
次期院長にと言われたのはつい最近のことだ。この話をリークしたのは院長本人に違いない。
俺が返事を渋ったから、周りから固めようとしているのだろう。あの人が考えそうなことだ。
「ええ、まあ」
強く否定もできず、俺はあいまいに返事をする。
「へえ、そうなんだ。壱也、実家は継がないんじゃなかったの?」
万由里は興味津々といった様子で俺を見る。
「ああ、そうだよ」
そのはずだった。今も継ぐつもりはないけれど、今それをここで語るのは場がしらけるだけだ。