俺様外科医の極甘プロポーズ
俺は彼女の携帯電話にメッセージを送った。
誤解を解くまで帰れないと。しかし、それは既読になることはなく、時間ばかりが過ぎていく。
途中寒さに耐えきれず車に戻った。すると車内に置いておいた病院のPHSに着信があるのを見つけた。
「柏瀬です。電話くれた?」
俺に電話をかけてきたのは当直医の後輩外科医の堂島だ。
彼はまだ二十八歳で大学病院に医局に籍を置きつつ、うちの病院に週二回ほど夜勤のバイトに来ている。同年代の医者と比べると少し頼りない男だが、俺は彼の素直さを買っていた。
「すみません、先生。こんな遅くに。夕方に救急車で搬送されてきた患者のことで相談があるんです」
「わかった。今から行くよ」
電話を切ると病院まで車を走らせた。
「先生!」
俺の姿を見つけると、堂島は泣きそうな顔で駆け寄ってくる。
「遅くなってすまない。で、どうした?」
「それが、その……」
腹痛で来院した患者を虫垂炎と判断して入院させたがあまりにも痛がるので不安になったという。
「とにかく見てみよう。エコー持ってきて」
「はい」
俺は患者の病室へいった。患者は汗びっしょりになりながらうなり声をあげている。
「外科の柏瀬です。診察させてください」
患者に声をかけながら腹を触った。
「……硬いな。痛みますよね。もしかしたら緊急手術が必要になるかもしれません」
患者は小さくうなずく。するとそこへ堂島がエコーを持ってきてくれる。
「先生、エコーです」
「ありがとう」
俺は患者の腹部にエコーを当てた。おそらく穿孔している。その可能性が高い。
「堂島。すぐにオペの準備だ。とりあえず看護師にそう伝えて」
「は、はい」
堂島の声が裏返っている。俺は慌てふためく彼の肩をたたいた。
「大丈夫だよ、慌てるな」
「わかりました」