俺様外科医の極甘プロポーズ
7.先生さようなら
一睡もできないまま朝を迎えた。
私はベッドから跳ね起きると窓のかかるカーテンをほんの少しだけ寄せて、アパートの入り口を見下ろしてみる。
まだの降り始めたばかりの太陽の光が冷え切ったアスファルトを照らしていた。もちろん、そこに先生の姿なんてそこにあるはずもなく、私は大きなため息を漏らす。
婚約者がいながら、私と同棲していたような男に未練なんてない。ないはずなのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
じりじりと焼けつくような、鉛をいっぱいに詰め込んだようなそんな違和感が充満している。
胸にたまった苦しさを吐き出そうと何度ため息を吐いても、けっして楽にはならなかった。
「仕事に行かなきゃ」
こんなにつらい出来事があっても、仕事に行かなければならない。そしてそこで先生と顔を合わせなければならないなんて、まるで罰ゲームみたい。
着替えて電車に乗り込む。病院の最寄り駅に近づくにつれ、どんどん心が重くなる。
このままどこか遠くへ行ってしまいたい。そんな気持ちを抑えて病院へと向かう。
白衣に着替えて病棟に着くと、柱の陰からナースステーションを覗く。
先生の姿はない。私はほっと胸をなでおろす。