俺様外科医の極甘プロポーズ
「それであなたが……」

「そうなの。だって私、数年後にはここの院長夫人になるかもしれないでしょう」

 ……院長夫人。そんな話聞きたくない。耳をふさぎたくなる内容に私は顔をしかめる。

すると彼女は申し訳なさそうにこういった。

「ごめんなさい。私ったら、しゃべり過ぎよね。こんな話あなたには関係ないわよね」

「……そんなことないです。壱也先生にはとてもお世話になっていますから」

 壱也先生は私と一緒に暮らしていた。そして好きだと言ってくれていた。それをこの人が知ったらどう思うだろう。

「よかった。ねえ、もしよかったらこれから病院の中を案内してくれない?」

「ええ、いいですよ」

 私はすんなりと承諾した。タイミングを見て先生との関係をこの人に話そうと思ったからだ。

私だけが苦しむなんてそんなのフェアじゃない。

自分にこんな黒い感情がわくことに驚いたけれど、それくらい心の傷は深くて、どうにかこの傷を癒そうと必死だった。

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