俺様外科医の極甘プロポーズ

「堂島先生の代わりに今日から勤務していただく大手先生です」

 朝のカンファレンスが終わった外科病棟のナースステーションで大手先生の紹介があった。

「大手万由里と申します。皆さんよろしくお願いしますね」

 大手先生は私と目が合うと、小さく手を振った。

「先輩、知り合いですか?」

 それに気づいた田口さんはすかさず聞いてくる。

「この間偶然病院内で会って、院内を案内したの。別に知り合いってわけじゃないよ」

「へえ、そうなんですね。それよりもあの人、壱也先生になれなれしくないですか?」

 だって婚約者だもの。そう言いたいのをぐっとこらえた。これ以上この病棟に波風を立てたくないのだ。知らなくていいことはあえて知らせない方がいい。それなのに、大手先生はみんなの前でこう言った。

「壱也君の婚約者として恥じない仕事をします」

 みんながどよめいた。田口さんは口をあんぐりと開けている。

壱也先生も驚いた演技をしているけれど、そんなウソをつく必要なんてもうないのだ。

私にはだいぶ前にばれている。それに、これ以上私のような被害者を出さないためにも大手先生と婚約していることを公表してよかったと思う。

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