俺様外科医の極甘プロポーズ
「俺はどうしてもりさに謝りたいんだ」
「なにを誤るんですか?」
「クリスマスの日のこと」
「そんなこともう、どうでもいいです。私が一番頭にきているのは、婚約者がいるくせに、私を好きだなんて言ったことです」
二股は私だけじゃなくて大手先生までも裏切る行為だ。
「大手先生は婚約者なんですよね」
「いや違う」
「そんな嘘を信じると思いますか?」
どう見ても大手先生が嘘をついているようには見えない。そうすると嘘をついてるのは壱也先生ということになる。
「そんな汚いものを見るような目で見ないでくれよ。嘘じゃないんだ。婚約者だなんていわれて俺も驚いている。どうしていまさらそんな話を持ち出したのか確かめないといけないとは思っている。けど、万由里に確かめるより先に、りさに話がしたくて来たんだ。俺は万由里よりもりさの方が大事なんだ」
「私の方が大事? またそんな甘い言葉で私をだまそうとするんですか?」
もうこりごりだ。私はため息をついた。けれど先生はあきらめない。
「ちがうよ。信じてほしい。どうか俺の話を聞いてくれ。君がうんと言ってくれるまでこの部屋から出すつもりはない! 仕事なんてどうでもいい」
先生は私の前で手を広げた。
真剣な表情からは、先生の硬い意志が見て取れた。仕事人間の先生が、仕事なんてどうでもいいだなんて言ってしまうくらい本気なのだということも痛いくらいに伝わった。
それに私もこれ以上逃げていても仕方がない気がした。だから先生の話を聞こうと思った。
「わかりました。聞きます。でも、それは仕事が終わってからでもいいですか?」
私にはやらなければならない仕事が山積みだ。もちろん先生にだって仕事はある。それに、こんな朝の時間に話を聞いて、冷静に業務をこなす自信がなかった。
「わかったよ。でも必ず……」
「大丈夫ですよ。もう、逃げませんから」
仕事が終わったら外科外来の診察室で落ち合おう。そう約束をした。