俺様外科医の極甘プロポーズ

その日、外科病棟は壱也先生の婚約話で持ち切りだった。渦中の壱也先生と大手先生は二人そろって胃がんの手術に入ってしまった。

「あんな美人の女医が相手じゃあきらめるしかないのかな」

 看護記録を書きながら、田口さんが言った。この話題だけ避けたい。私は聞こえないふりをしながらパソコンに向かっていた。けれど、田口さんは「先輩聞いてます?」と私の肩をつつく。

「あ、忘れてた。十号室の患者さんを売店に連れて行く約束してたんだった」

 私はそそくさとナースステーションを出る。売店に行くのは嘘じゃない。約束の時間より少し早いけれど、いかがですかって聞いてみよう。私は車いすを押して、十号室へと向かった。

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