俺様外科医の極甘プロポーズ
「先生らしいですね。患者さんを優先するところ、悔しいけど好きです。でも……」
「でも?」
「あの夜。私見たんです。先生と大手先生が二人でタクシーに乗るところを」
そしてその日の夜、先生は帰ってこなかった。
緊急事態だったことも、その後のやむを得ない事情もよく分かったでも、女性と一緒にタクシーに乗ってどこで何をしていたのか、その説明がまだだ。
「……見られていたのか」
そう言いながら目を伏せると小さくため息を吐いた。
「はい。確かに見ました!」
私は語気を強めた。言い逃れはさせないぞという思いを込めて。
先生はまた息を吐くと、まっすぐに私を見た。
「確かに俺は酔って彼女のマンションに泊まった。でも信じてほしい。彼女とは何もなかった。ただ、以前付き合っていたからという理由で万由里は酔った俺を家に泊めてくれたんだよ。本当にそれだけのことなんだ」
「……なにもなかったんですか?」
「ああ、そうだよ。別れた女に手を出すほど節操のない男だと思われていたなんてショックだよ」
「すみません。でも、本当に別れたんだったら、どうして大手先生は婚約者だなんていっているんですか?」
先生は別れたと言うけれど、大手先生は終わっているだなんて思っていないはずだ。
「おそらくそれは」
壱也先生が口を開いたと同時に、診察室のドアが開いた。