俺様外科医の極甘プロポーズ
「壱也! ここにいたのね。あら、花村さんも?」
ドアの隙間から顔をのぞかせたのは大手先生で、彼女は先生と私が二人きりでいることを驚いた様子だった。
「万由里ごめん。いま俺はりさと話をしているんだ」
「あらそう。でも私もここにいてもいいでしょ! 婚約者なんだから」
にっこりと微笑む大手先生に壱也先生ははっきりと言った。
「そのとこだけど、万由里。俺は君のことを婚約者だなんて思っていないよ」
「どういうこと?」
大手先生は大きな目を見開いて壱也先生を見た。
「確かに俺は万由里と付き合っていた頃に、結婚してほしいといったことは認める」
「そうよ」
「でも、お前は返事をくれなかった。あれはもう過去の話だ」
壱也先生は大手先生にプロポーズしていた。その事実に私の心は押しつぶされるように痛んだ。
「それに俺はいま、りさと付き合っている」
「待って壱也! 私たち、別れていないわよ。確かに壱也が大学を離れてから疎遠にはなったけど、それでどうして別れたといえるの?」
大手先生は必氏の形相でそう訴えた。けれど、壱也先生は表情一つ変えずにこう言い放つ。
「……いえるよ。だって万由里にはひと月前まで付き合っている男がいただろう?」
「どうししてそれを?」
大手先生は大きな目を見開くと声を震わせる。