俺様外科医の極甘プロポーズ
上がった息を整えながら一番上まで登ると、屋上のドアの前にしゃがみこんでいる大手先生を見つけた。
屋上は日中の限られた時間しか解放していないため、電子錠の暗証番号を知らなければ開けられないのだ。私はほっとしながら彼女に近づくと、隣に腰を下ろした。
「……なんできたの?」
顔を伏せたまま先生は言った。
「先生が心配だからです」
「同情なんていらないわ」
「同情ではありません。私は職業柄、困っている人を見過ごせないたちなんです」
それは患者さんであっても、スタッフであっても同じだ。
「私で力になれることがあれば協力します。だから、死ぬなんて言わないでください」
「じゃあ、壱也を私に譲ってよ」
いいながら先生は顔を上げた。その目にはまだ涙がにじんでいる。
「それは、できません」
「どうして? 医者と付き合いたいのなら、いくらでも紹介してあげるわよ」
「結構です! 私は壱也先生が医者だから好きになったわけじゃありませんから。だから、たとえ先生が医者じゃなくなっても好きでいると思います」
もし先生が先生でなくなっても、不器用でまっすぐな生き方は変わらないだろう。そんな彼を私はそばで支えていたいと思うに違いない。