俺様外科医の極甘プロポーズ
「そう」
大手先生はつぶやくように言うと、また顔を伏せようとする。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「……なに?」
「大手先生は壱也先生のどんなところが好きなんですか?」
「わからない。ただ、両親を納得させられる人間だと思うわ」
「両親を納得させられるって、どういう意味ですか?」
「そのままの意味よ。うちの両親は私の夫になる人間に社会的地位と将来性を求めているの。だから私もそういう人を選んで付きあってきた」
「むなしくならないんですか?」
「別に、ならないわ」
「それが本当なら、先生の方こそ壱也先生にこだわる必要なんてないじゃないですか?」
両親を納得させられる人であればいいのだから、なにも壱也先生にこだわる必要はない。
「……そうね。でも、私には時間がないの」
「時間がない?」
「今年中に結婚しないならお見合いをしろと言われたの。冴島はカナダに行ってしまって最低二年は帰国しない。だったら壱也でいいかなって思った。彼、私との結婚を考えていたようだし」
「それは過去の話ですよね?」
「そんなことどうでもいいじゃない」
「よくないですよ」
壱也先生との婚約が現在進行であっていいわけがない。