俺様外科医の極甘プロポーズ
「そろそろ帰りませんか?」
時計を見ると八時を少し過ぎている。通りでおなかが空くはずだ。
「私はもう少しここで頭を冷やしていくわ」
「そうですか。じゃあ、私はお先にしつれいします」
もう死にたいだなんて思うこともないだろう。私はひとりで階段を下りていく。すると踊り場に壱也先生の姿があった。
「先生! ずっとここにいたんですか。来てくれたらよかったのに」
私は頬を膨らますと先生をにらんだ。
「ああ、悪い。登場するタイミングを逃したなとおもってさ。説得してくれてありがとうな」
「……いいえ」
「怒るなよ」
「だって、もとはといえば先生が悪いんですよ」
「だな」
「それなのにまるで他人事みたいに私に押し付けて!」
「だからありがとうっていったろ」
先生は私の頭をぐしゃぐしゃになでると額に軽くキスをする。
「これで仲直り、してくれるよな?」
そんなふうにされたら、思わず許してしまいそうになる。
「……先生はずるいです」
「そうか?」
驚いた顔をする先生に私はまじめな顔でこう言った。
「そうですよ! そうやっていつも余裕で、不安になるのはいつも私の方」
「そうだな。これからはそうならないようにちゃんと考えるから」
「本当ですか?」
「本当だ。だからうちに帰って来いよ。りさがいないと寂しいんだ」
「……わかりました」
なんだかうまくごまかされてしまったような気がするけれど、私だって先生がいないと寂しい。