俺様外科医の極甘プロポーズ

誰もいないロッカールームで私は大きなため気を吐く。

「なんなのよ、あいつ」

突然やってきた壱也先生のせいで、いごこちのよかった病院の雰囲気ががらりと変わってしまった。

柏瀬病院に貢献してきた医者の首をはね、病院の変化についていけなくなった看護師は次々と辞めていく。外来の担当医がほとんど入れ替わったせいで、うちの病院から離れていく患者さんもたくさんいる。よくしてくれた医療機器や製薬会社の営業マンたちも一気に寄り付かなくなった。この異常事態に医院長も副院長もいまだに黙ったままだ。

「ほんと、おかしな病院」

今日は飲んで帰ろう。こんな気持ちを家に持ち帰るのは嫌だ。幸い明日は夜勤だ。私は病院を出ると駅前の居酒屋に立ち寄った。

「らっしゃい!」という威勢のいい掛け声に出迎えられ、ほんの少しだけテンションが上がる。
席に着くと、熱々のおしぼりが渡された。人目もはばからず、ごしごしと顔を拭く。どうせメイクは取れているし、どうでもいい。

ハイボールと卵焼き唐揚げを注文した。まもなく運ばれてきたそれらを、あっという間に平らげる。

「はあ、おいしい。至福~」

おなかがすいていたこともあり、私はもつ煮を追加注文する。

平日の夜。店内にはひとりのみのサラリーマンが多い。そういう私もひとりだ。恋人はいたことがない。出会いがないわけではなかった。でも、学業と仕事を言い訳に恋愛をしてこなかった。転職してやっと自分の時間ができたと思ったら、また仕事漬けの毎日になってしまった。

もしかしたらこのまま一生独身かもしれない。

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