俺様外科医の極甘プロポーズ
8.先生のプロポーズ
「短い間でしたが、大変お世話になりました」
あれからひと月後。堂島先生の復帰が確実なものとなり、大手先生は柏瀬病院を離れることになった。
駅前のビストロを貸し切った、大手先生の送別会。
もちろん堂島先生の快気祝いも兼ねている。
今回は病院主催ということで、副院長である晴也先生をはじめ他科の医師も参加して大いに盛り上がっている。
「大手先生はT大へ戻るんですか?」
田口さんがそう聞くと、大手先生は首を横に振った。
「いいえ。カナダに留学するのよ」
「カナダですか?」
「そうカナダよ」
「じゃあ。壱也先生とは遠距離恋愛になってしまうんですね。先生はそれでいいんですか?」
田口さんの疑問はもっともだ。壱也先生は大手先生の立場を考えて婚約者ということをあえて撤回していない。
「そのことだけど、あの話は嘘なの」
大手先生の告白にみんな驚いて騒ぐのをやめた。晴也先生も飲んでいたワイングラスを置いて大手先生に注目している。
「新しい病院で面倒に巻き込まれたくなかったから婚約者を名乗らせてもらっていただけ。私の本当の恋人はカナダにいるわ」
あれから先生は冴島先生に連絡を取り、復縁することができたそうだ。しかし両親は説得することができず、苦肉の策としてカナダに逃げることにしたそうだ。
あんな助言をしてしまい、大手先生のご両親からはとことん恨まれそうだけれど、先生のが幸せならそれでいい。そう思うことにしている。