俺様外科医の極甘プロポーズ
死神と呼ぶほど壱也先生を嫌いになったり、倒れた先生を放置したり、晴也先生の噂話を発端に、私は仲間外れにもされた。そしてとどめの大手先生。
こんな状況でお付き合いしていますだなんて言い出すことはできなかった。
「……できれば私が壱也先生の彼女になりたかったです。でも、花村先輩には勝てません。全力で応援させていただきます!」
「田口さん。ありがとう」
私たちはもう、付き合っていることを隠さなくていい。壱也先生の婚約者として仕事をするのは緊張するけれど、精いっぱい頑張ろうと思う。
「そうだりさ。明日院長に報告しに行こうと思うんだ」
「院長先生にですか?」
「うん。本当はりさのご両親の方が先だと思ったんだけど、遠いんだよな実家」
「はい。新幹線で片道三時間かかります」
だから実家へ帰るのは一日がかりになる。しかも両親とも仕事をしてるので休みを合わせないといけない。
「りさのご両親には日を改めてご挨拶に伺うとして、とりあえず院長には話しておかないとならないな」
「そうですね」
明日院長に会って結婚の報告をする。そう考えるだけでどうしようもなく緊張した。
「大丈夫だよ。りさ。こっちにおいで」
私の気持ちを察したのか先生はそっと抱きしめてくれた。
「なにも心配しないでいい。そうだ、婚約指輪を買わないとね。プロポーズの時に渡せなくてごめんな。どんなものがいい?」
「そんな。いいんです。婚約指輪なんていりません。私は先生がいてくれたらそれだけで十分です」
そう。指輪なんていらない。私が欲しいのは先生自身だ。