俺様外科医の極甘プロポーズ
8.5俺の幸せ
「結婚は認められないな。看護師結婚するなんて三流の医者のすることだ。そんなお前には院長の座は譲らんぞ!」
院長室に響いてその声は、いつも耳にする優しく穏やかなものではなかった。絶句したまま俺を見上げる花村の手をそっと握りしめると院長をにらみつけた。
「ああ、そうですか。別にあなたに求めてもらわなくても結構です! いこう、りさ」
所詮こんな男だ。話にならないと思い、院長室を出ようと思った。
「でも」
りさは困った顔のまま、俺を見上げる。そんな俺たちに院長はなおも話しかけてくる。
「……壱也。お前は圭織にそっくりだな」
俺は足を止めた。圭織とは俺の死んだ母の名前だ。
「母さんに?」
「短気で自分の意思を曲げないところがよく似ている」
「だから何だというんです!」
「ほら、そういうところだ」
院長は遠くに視線を移すとゆっくりと話し出す。
「……三十五年前。私は先代の院長である父にそう言われた」
「三十五年前?」
だから何が言いたいんだ。俺はイラつきながら院長の話を聞いていた。