俺様外科医の極甘プロポーズ

「あの時の私は、親の敷いたレールの上を歩くことしかできなかった。圭織を手放すこともできないまま、今の妻と結婚した」

そうだ。それでも俺の母親は院長のことを好きでいた。そして無責任なこいつの子供を妊娠した。

「後悔ばかりの人生だった。こんな私だから、圭織は愛想をつかして離れて行ったんだと思う」

「本当にそうだ!」

 殴ってやりたかった。いまさらこんな話を引っ張り出していったいなんだというんだ。

「だからお前には自分で自分の幸せを歩んでもらいたいんだよ」

「いわれなくてもそのつもりでいます。別に院長の椅子には興味ありませんし、今すぐ出て行けというのなら、彼女と一緒に退職する覚悟です!」

 売り言葉に買い言葉とでもいうのだろうか。二人で仕事を辞める話までしてしまった。けれど、俺だけが辞めるという選択肢はなかった。彼女と離れるなんてしたくない。

「ごめんりさ。勝手を言って済まない」

「いいえ。私は先生についていきます」

「ありがとう」

「はい」

 俺はうなずく花村の手をさらに強く握りしめる。すると彼女も握り返してくれた。

「いい人を見つけたな、壱也。お前たちなら柏瀬病院を任せることができそうだ」

 院長の言葉に俺は耳を疑った。俺が彼女と結婚することを反対していたんじゃなかったのか?意味が分からない。

花村も同じだったようでぽかんと口を開けたまま固まっている。

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